黒い糸1-2

・・・・・・結局入るなら、さっさとしてくれればいいのに・・・・・・






あ、気にしないで下さい・・・
独り言ですから・・・








適当に座って下さい。
直にお茶でも入れますから・・・








・・・え？
僕は何者かって？










それは・・・
そうですねぇ・・・










語り続けることを科せられた者・・・です。






誰にって？








それは・・・
どこかの誰かさんです。






僕を生み、僕に命を与え、僕を生かし続ける者です。






親かって？
そんないいもんじゃ有りませんよ・・・






さ、お湯が沸くまで少し話をしましょうか・・・






夜は長いですからね・・・






これも何かの縁です。
付き合ってもらいますよ？

黒い糸1

語り人

こんにちは・・・
あの・・・何を難しい顔して歩いてるんですか？


え？
この辺りで噂になっている黒いローブの人を捜しに来た？



なぜ？



その者を見つけてどうするんですか？
異世界へ連れ込んで、何をしてるか調べる？
何を思い、何を目的にそんな事をしているかを訪ねたい？







あなたも面白い方ですね・・・




その疲れた表情を見ると、おそらく森の中をグルグル探しまわり、
道に迷ってしまったんでしょう？

あの村から一本道だと言うのに、道を見失い迷ってしまった・・・




たまにいるんですよね・・・
そんな間抜けな人が・・・




あぁ、気にしないで下さい。
本当の事を言ったまでですから・・・



あれ？気を悪くされてしまいましたか？



フフッ・・・
いえ、久々に人と話したもので、うれしいんですよ・・・
こうして、感情を表に出した人を見ると・・・






そうだ、どうせ帰り道が見つからないんですよね？




どうですか？
一杯お茶でも・・・




ほら、いつの間にか日も暮れ始めましたし、
どうせなら、一晩の宿でもお貸ししましょうか？






え？悪いから断る？
そんな・・・別にいいんですよ？




僕は話し相手が出来てうれしいですし・・・




なにより、あなたの目的に一役かえそうですし・・・









え？
気づいてなかったんですか？
あなたの探していたのが僕だって・・・






え？ローブを付けて無いじゃないかって？




当たり前じゃないですか・・・
魔女じゃ有るまいし・・・






それより、どうするんですか？
もう、僕の小屋の前なんですけど・・・




入るか入らないかはあなたに任せます。




今なら引き返せますからね・・・



ただ、入るなら早くして下さいね・・・






この当たり出るんですよ・・・




え？何が出るか？
決まってるじゃないですか・・・・・・





僕に報復しようとする輩がです。


まぁ、僕も色々恨み買っちゃってますからね・・・






とばっちり受けたくなかったら、入って下さい。
入らないなら速やかにこの地を離れて下さいね・・・








いくら僕でも、なんの関係もない方を巻き込みたくないですから・・・

黒い糸

森の中の家

森の中に、不思議な小屋が有りました。


誰も住んでいない様な古びた小屋。




だけど、一つ噂が堪えませんでした。

その小屋の前で、黒いローブに身を包んだ者に会ったら、
不思議な世界のティーパーティーに招待されてしまうと・・・






その人はいつも笑顔を浮かべている。
その笑顔を向けられたら最後・・・


不思議な場所で、不思議な話を聞かされるだろう。


その人から逃げられた者は、いるかいないか分からない。










誰一人として、その者の事を話そうとはしないのだから・・・