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気まぐれ日記(笑)
普通の日記・音声・バトン、なんでもアリの日記です♪
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5.薬

風邪をひきました…



「ゴホッ…ゴホッ…」
「杏?」
「何メルメル?」
「今、咳…」
「ん?あぁ、なんか風邪?」
「えぇ?!大丈夫!」
「あ、大丈夫大丈夫…」

昨日からちょっと喉が痛くて、咳が出てきたけど、
まだそんな酷くないし、私はたかくくっていた。


まぁ、今日の晩早めに寝れば、治るでしょ……


「杏…ちょっとこっち来い…」
「何亜梨ちゃん?」

咳を我慢して亜梨ちゃんに近づくと、突然手首を捕まれ、引っ張られた。

「うわっ?!何亜梨ちゃん!!」


そのまま、亜梨ちゃんの側までくると、
突然亜梨ちゃんが私の額に手を当てた。


「………え?」
「………戒厘………」
「了解です…」
「……えぇ?!ちょっと!!」


何故か亜梨ちゃんと戒厘ちゃんの阿吽の呼吸に巻き込まれた私は、
今度は戒厘ちゃんに手を引かれ、部屋を出されそうになった。


「お大事にね杏〜」
「メルメル?!そんな酷くないし!!」
「オレらにうつす前に、さっさと治してこい…」

亜梨ちゃんの言葉を最後に、私は皆といた部屋から出されて、
寝室に移動した。

「ホント素直じゃないんですから…」
「誰が…?」

私は観念して、着替えながら机の前で何かをしてる戒厘ちゃんの方を向いた。


「梅流ちゃん以外皆…」
「亜梨ちゃんも?」
「ええ、一番心配してるくせに…」
「心配?そうかな??」

着替え終わり、ベッドに潜り込んだ私に、戒厘ちゃんは何かを持ってきた。


「主治医であり僕でさえ、気づきませんでしたもん…」
「何を?」
「杏ちゃんが熱あることです…」

戒厘ちゃんからトレイを受け取ると、
今度は戒厘ちゃんが私の額に手を当てた。


「…微熱ってとこですね……」
「だから、そんな酷くないって…それより、何これ?」


手のトレイをみると、明らかに薬と分かったけど、
戒厘ちゃんを見るとちょっと気になる笑顔を浮かべていた。


「最近、新しい薬開発したんですよね…」
「私に試せって?」
「まだ、酷くないならいいですよね?」


にっこり笑う戒厘ちゃんに私はため息をついた。

「ホント素直じゃないんだから…」
「何かいいました?」
「別に〜…ってか、ホントそんな酷くないし……」
「飲まないなら、無理矢理飲ませますよ?」
「どうやって…」
「たとえば…口移し?」

「…………マジそれはさすがに勘弁………」
「冗談ですよ……さぁ、飲んでください……」


私は渋々薬を飲んだ。

「苦っ………」
「良薬口に苦しって言うじゃないですか…」
「ハンパなく苦いんですけど…」
「ハイハイ、いい子で寝ましょうね…」
「うわっ…なんか、ムカつく…」
「文句は、治ってから聞きますから、今は早く寝てください…」


そう言って、優しく私を休ませる戒厘ちゃんに、
私は一瞬勘違いを起こしそうになった。


「そんな優しくされたら、勘違いしちゃうじゃん…」
「勘違いですか?」

急激に眠気におそわれた私は、目を閉じながら話を続けた。


「なんか…」
「なんですか…」
「戒厘ちゃん…優しい…みたい……」


私はそこで意識を手放した。


「酷いなぁ…」


そんな戒厘ちゃんの優しい声は聞こえなかった。


ホントはお母さんと言いたかったんだけどね…


しばらくして、ぐっすり眠った私は、気配を感じて目を覚ました。


「あれ…?亜梨ちゃん?」
「起きたか…」
「何で?」
「何がだ?」
「いや、何でいるの?」
「いちゃ悪いか?」
「いや、悪くないですけど…」


亜梨ちゃんの分からない理由に釈然としないながらも、
目を開けたとき側に誰かがいてくれたことで、すごく安心していた。


「…ってか、うつるのいやだったんじゃなかった?
あ、何とかは風邪引かないって…」


なんか、安心したことが悔しくて、悔し紛れに亜梨ちゃんを挑発すると、
亜梨ちゃんが黙って近づいてきた。


「な…なによ……」
「……薬が効いたようだな…」
「え…?」

亜梨ちゃんは、近づくとまた私の額に触れた。


その手と雰囲気が思いがけず優しくて、思わず見とれてると、
亜梨ちゃんは突然フッと笑った。

「……知ってるか杏…」
「何が?」
「最近はな……」


私から離れながら話し続ける亜梨ちゃんを見てると、
さっきまで座っていたイスに戻った亜梨ちゃんは、私に視線を向けた。


「最近は…何?」
「……自己管理ができないバカな奴が風邪引くんだと…」
「………なっ?!」


一瞬分からなかったけど、『クククッ』と笑う亜梨ちゃんをみて、
私はやっと意味を理解した。


「亜梨ちゃん?!」


叫んだ瞬間、咳がこみ上げ、私がせき込むと、
そこに買い物袋を下げたメルメルが入ってきた。

「大丈夫杏?!亜梨姉、杏を無理させちゃだめって言ったでしょ!!」
「オレは別に無理をさせてないが?」
「も〜!」


咳こむ私の背中をさすりながら、メルメルは亜梨ちゃんに文句を言った。

「杏?水分取った方がいいよ?」
「ん〜……」

メルメルに飲み物をもらい、口付けると今度はメルメルは
プリンとゼリーを手にしていた。

「こういうのが食べやすいんじゃない?」
「ん〜…」
「お前等は夫婦か…」

私達のやりとりをみた亜梨ちゃんが、ぼそっとつぶやいた。


「杏がお嫁さん?」
『逆?!』


ありきたりなメルメルのボケに、私は亜梨ちゃんと同時に叫んでいた。


「それだけ元気なら、もう大丈夫ですね…」

ニコニコしながら入ってきた戒厘ちゃんは、すぐに私の側にきた。


「どこか行ってたの?」
「えぇ、亜梨ちゃんに留守番を頼んで、
梅流ちゃんと買い出しに行ってきたんですよ…」
「ふ〜ん…」
「風邪で熱があると、人肌恋しいと思って、
手頃な人間買おうかと思ったんですけどね…」
「いや、それは流石にだめでしょ…」
「だから、身近な人を…」
「身近な人……?」

私は、聞くのが怖いような気がしつつも、思わず聞いてしまった。


「アイツだろ…」
「あ…いつ?」
「うん、杏の…」
「ちょっと待って?!まさか!!戒厘ちゃん!!!」

ニコニコのメルメルを見て、イヤな予感がしたから、
黙ってる戒厘ちゃんを見ると、メルメル以上にニコニコしてた。

「あの戒厘さん………?まさか、よけいなことしてないよね………」
「さぁ?何でしょ?よけいな事って…あぁ、それより、杏ちゃんは
もう少し休んだ方がいいですよ?」
「そうそう、ゆっくり休んで!」

戒厘ちゃんとメルメルに無理矢理寝かされると、亜梨ちゃんが立ち上がった。

「もう大丈夫だろ?」
「もう行くんですか亜梨ちゃん?」
「あぁ…そろそろ客が来るんだろ…」
「あ、やっぱり気づいてました〜?」
「んじゃ、またくるね杏!ゆっくり休んで?」


あっと言う間に去っていった三人を、あっけに取られていたけど、
最後の言葉に、今までにないイヤな予感がした…


「まさかね……」


しばらくして部屋に入ってくるであろう人を、会いたいような、
今は会いたくないような、ものすごい複雑な思いを抱きつつ、
なんかだるくなって、どうでもよくなってきた。


もう一眠りしようかな…


今日は珍しいのいっぱいみれたな…

なんか、家族みたいだった…


こんな楽しい発見があるなら、たまには風邪引くのもいいかもね…


そんなことを考えながら、私はまた深い眠りについた。

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