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気まぐれ日記(笑)
普通の日記・音声・バトン、なんでもアリの日記です♪
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8.任務


青龍の神子と呼ばれ、他の神子を名乗る集団に合流して、数週間……


やっとなんとか三人の性格が掴めてきた………


って、違うか………
あの、玄武の神子以外の二人はだいたいは掴めたけど、
あの人だけは掴めない…


私を認めてないくせに、庇おうとする…
認めてないくせに、私を見るとき、やたらと悲しそうな…
何かの苛立ちを隠すような…
複雑な顔をする…


そして、何より私は、その目を見て、彼女にそんな顔をさせてることに、
理由も分からないとてつもない罪悪感に襲われる………


ホント、訳分からない…………

そんなある日、私は亜梨ちゃんに呼ばれた。

「何か呼んだ?」
「今日舞踏会がある。この服を着て、戒厘と行って来い。」
「………はぁ?!ちょっと待ってよ!舞踏会なんて意味分かんないし、
何でよりにもよってあの人となの?!ってか、行く意味分かんないし!!」
「……任務だ。」


亜梨ちゃんは、人差し指を上に向け、ただそう言った。

「わけ分かんないよそれじゃ!!」
「オレが知るか…いいから、黙って行きやがれ…」
「だから、何しに?!」
「……さぁな……」
「ちょっとぉ………」


いろいろわけ分からなく、私は思わずうなだれた。


「おそらく……」
「お偉いさんの趣味とか言わないよね……」
「言うか……最近、変な輩が無差別に人間を襲ってるからな…」
「…襲うか襲わないか分からない敵に会うために、行けってこと?」
「イヤ…お前等は囮だ……」
「………ますます分かんないんですけど……」
「…………いいから、黙って行きやがれ!」


いい加減、説明がめんどくさくなったのか、私は部屋から追い出された。
一緒に投げ出された服を取り上げると、私は思わずあまりの驚きに、
一瞬言葉が出なかった。


「なんで、私が男物着なきゃいけないのよ!!!」

私は、メルメルと今回のパートナーがいる部屋に駆け込んだ。


「………どしたの杏……?」
「なんで、よりにもよって男物なのよ!それに何で私が…」


そこまで叫んだ瞬間、戒厘ちゃんが私の目の前に立った。


「な…何よ……」
「僕の方が背が低いからです…それに、安心してください……
僕だって、今のままじゃあなたと仕事以外で組むのはごめんですから……」
「…っ?!」
「厘ちゃん…喧嘩売らないの……杏も気にしちゃダメだよ…」
「でも!ってか、メルメルと亜梨ちゃんは?!」
「後方支援〜」
「はぁ?!」
「変わるの無理だからね杏?」
「何で?!」
「まず、亜梨姉…あの無愛想じゃ、社交界には向かないもん…」
「メルメルは?!」
「男の人と極力関わりたくない。」
「…………」


メルメルの答えに、一気に疲れを感じた私は、部屋を出ようとした。


「杏!ちゃんと守るから安心して!!」
「ハイハイ。頼りにしてるからねぇ…」


私は後ろ手に手を振り、部屋を出て扉を閉めた。
そのことで、私はメルメルの呟きを聞くことは無かった。






「同じ事を聞くくらい、息ぴったりなのにね………」



そしてその夜・・・
私は渋々男物の煌びやかな服を着込み、ばれないよう化粧をして、
なるべく男の人に見えるよう変装した。


「うわぁ・・・杏かっこいい・・・」
「ありがと・・・」


着替えが終わり、部屋を出ると、そこにいたメルメルに会った。

「・・・で?今回の任務のパートナーは?」
「まだ準備できてないみたいだよ?」
「ふ〜ん・・・」


まだか・・・
私は少し喉が渇いて水を飲もうとコップを持って水道に移動したとき、
突然メルメルの声が聞こえた。

「厘ちゃん?!!」
「お待たせしました・・・」
「すごい!!!」



そんな大げさな・・・
と、メルメルの声に、私は少しウンザリしながら、水を一杯飲んで、
視線をそちらに向けると、そこには見知らぬ女性が立っていた。



「・・・どちら様?」
「戒厘様ですが?」
「・・・・嘘・・・・」
「嘘ついてどうするんですか・・・
ばれないためには、コレくらいしないと・・・」


そう言って微笑む女性は、声は明らかにあの毒舌者なのに、
姿はどう見てもか弱そうな女性だった。

「・・・化け物が・・・」
「ちょっ?!酷いじゃないですか亜梨ちゃん!!」


突然入ってきた亜梨ちゃんが、戒厘ちゃんの真後ろで呟いた。
そんな亜梨ちゃんに笑う戒厘ちゃんは、
今までに見たことない姿で微笑んでいた。


「・・・杏見惚れてる?」
「・・・うん。」
「・・・認めるんだ・・・」
「・・・え?だって・・・変わりすぎでしょ・・・」
「・・・案外、術だったりして?」
「あぁ、呪術者だしね・・・」


そんなことをメルメルと話していると、戒厘ちゃんが視線をこちらに向けた。

「・・・よく分かりましたね術って・・・」
「・・・マジ?」
「ええ。」
「どんな術なの?!!」
「梅流ちゃん・・・それは、企業秘密です。
さっ、杏さん?行きましょうか?」
「・・・は〜い・・・」

笑顔でのはぐらかし方は、戒厘ちゃんのままだ・・・
そんなことを考えながら、私は戒厘ちゃんと並んで会場へと向かった。


無差別に人間を殺すかもしれないという、見知らぬ敵を見つけるため、
舞踏会にもぐりこみ、パートナーと共に周りを注意し、
もしもその敵を見つけたら、後方支援の亜梨ちゃんとメルメルに
どうにかして伝える。
それが、今回の任務。


「・・・って、何してんの?」
「・・・え?立食だったんもで、食べ物取ってきたんですが・・・」
「・・・いやいやわざわざ食べなくていいでしょ・・・」
「だって、せっかくだしもったいないじゃないですか・・・
それに、もう少し男の人になりきってください。」
「・・・ハイハイ。だったら、ちゃんと大人しくココに立ってろ。」
「え?」
「・・・飲み物とって来る・・・」
「はい。」


いつも以上にやりにくくて、いつも以上に疲れた私は、
少し歩こうと飲み物を取るといって戒厘ちゃんの隣から移動した。

それにしても、多いなぁ人・・・

こんなところで犯罪が起きないはずがない・・・


ほら、早速・・・
嫌がってる女性に、ぶっ細工な男が迫ってる。

「ちょっと・・・やめてください・・・私、パートナーいますし・・・」
「いいじゃん、一曲付き合ってよ・・・」
「でも、彼すぐ戻ってくるから・・・」
「大丈夫、大丈夫。すぐ終わるし、ね?ほら・・・」


手を引っ張られ、踏ん張って堪えようとしてる女性だけど、
高い履物は履き慣れないのか、フラフラして危なっかしい。


「きゃっ?!!」


あまりに男が強引に引っ張るから、女性が転びそうになった。
私は思わず走り寄ると、後ろから軽く抱きしめるように女性を支えた。

「え?!」
「大丈夫ですか?」
「おい、何だアンタ・・・」
「アンタこそ何だよ・・・無理やり引っ張ったら、危ないだろ・・・」


男っぽい乱暴な台詞あってるかな・・・

そんなことをのんびり考えてると、やっと男の手から解放された女性が、
私の後ろに隠れるように逃げ込んだ。
それにしても、小柄な人だなぁ・・・

「大丈夫?」
「はい・・・」
「テメェ・・・かっこつけてんじゃねーぞ・・・」
「・・・オッサンはカッコ悪いよ・・・無理やり嫌がる女の子引っ張って、
怪我させたらどうするんだよ・・・」
「このっ・・・・!!」
男が興奮しすぎて、殴りかかってきた。


けど、あんまり喧嘩したことないんだろうなぁ・・・


「無理しないほうがいいよ?ってか、舞踏会をつぶす気?」


私は殴りかかってきた男の手を受け止め、そのまま床に押さえつけた。


「・・・今さ、俺すごいめんどくさいことさせられてんの・・・
イライラしてんだよね・・・あんまりお痛が過ぎると・・・酷いよ?」


耳元でそう囁くと、男は悔しそうに暴れようとした。

「・・・このまま腕の骨折ってもいいけど?」
「・・・っ?!!」

私が力を入れ、男が叫び声を上げようとしたとき、私の肩に誰かが触れた。

「何してるんですか?」
「・・・別に・・・」
「私をおいて、こんなところでお遊びですか?」

顔だけ向くと、戒厘ちゃんが微笑んでいた。
知ってるものにしては、一番嫌な微笑を浮かべて・・・


「さぁ、手を離して・・・」


私を男から離すと、うずくまったままの男に、戒厘ちゃんが近づいて、
しゃがんで顔を上げさせた。

「・・・連れがお世話になりました・・・」
「・・・このっ?!」
「・・・お怪我はありませんか?」
「・・・あるわ!!」
「そうですか・・・それは、困りましたね・・・」
「このまま訴えてやる・・・治療費出してもらうからな!!!
恥じをかかせやがって・・・・お前等全員破滅させてやる!!!!」



男がそう叫んだとき、戒厘ちゃん笑顔が変わった・・・
たぶん、それを感じたのは近くにいた私だけだったと思う。


止めなきゃ!!!


そう思ったとき、すでに遅かった。
そっと戒厘ちゃんは男の頬に手を当てると、にっこりと微笑んだ。


「・・・消えてください・・・」
「なっ?!」
「ダメ!!!」


戒厘ちゃんの肩をつかんで、男から引き離すと、
男は一点を見つめたままピクリとも動かず、一方の戒厘ちゃんは、
冷たい笑みを浮かべて男を見下ろしていた。



「う………ぅあぁぁぁぁぁ!!!!!」

男は、奇声を発しながら走り去った。

「なんだあれ………」

ちょっと冷静さを取り戻した私は、男の背中をあきれて眺めていると、
隣の戒厘ちゃんが動いた。


「あなた、大丈夫ですか?」
「……え?あ、はい!ありがとうございました!!」

戒厘ちゃんが、自分よりも小柄な女の子に声をかけると、
彼女はことの経緯をただ驚きのまま見つめていた彼女は、
勢いよく頭を下げた。


すると、髪に指していた飾りが、その勢いで床に転がり、
私の足の下に転がった。


私は、それを拾い上げると、彼女に近づきそっと髪につけ直した。


「気をつけて……」
「あ……はぃ……///」

かわいいなぁ…
純粋にそう思っていると、戒厘ちゃんの声が聞こえてきた。


「そろそろ行きましょうか……」
「あぁ……それじゃ……」


そう言って彼女と別れ、私たちは壁際に戻ってきた。

「さっきの男…」
「はい…」
「何をしたの?」
「ああ、あれは…」


隣に立つ戒厘ちゃんを見ると、思いっきりどす黒い笑みを浮かべていた。

「一種の簡単な暗示ですよ…ちょっと怖い幻覚を見せたんです……」
「暗示って……ちゃんと解けるの?」
「もちろん……明日の朝には解けますよ……寝ればあっというまです……」


寝れないだろうなあの男………
黒い笑みを浮かべる彼女の隣で、私はあの男に哀れみを感じた。


「そんなことより……杏さんって、なかなか……」
「何?キレやすいって??」
「いえ…違います……なかなか、タラシ……ですよね……」
「はぁ?!どこが!!」
「それも、天然ですか……」


そう言って笑う戒厘ちゃんは、本当に楽しそうだった。

「……私、ちょっと連絡してきます……」
「は?突然?」
「えぇ…たぶん、遊んでばかりいて、ご立腹でしょうから…」


そういうと、我らがリーダー達のところへ行ってしまっ
たパートナーを見て、ますます彼女に疑問を持った。



彼女が何かを感じるとき……
特に、亜梨ちゃん関連の思いつきは、100%と言っていいほど、
的中させる……
これも一種の術なのかなぁ…

そんなことを思いながら、ぼーっと人間観察をしていると、
隣に誰かが立った。


戒厘ちゃんが帰って来たにしては早すぎると、不思議に思って横を見ると、
そこには綺麗な長身の女性が立っていた。



綺麗な人………だけど、なんか苦手かも………


綺麗すぎるというか………
綺麗だけど、棘のある黒いバラの様な人………





私は、何故かその人にかなりの嫌悪感と、少しの恐怖心を抱いた。



すぐ目を離すつもりだったけど、なぜか目を離せなかった私の視線に
気がついたのか、隣の女性はチラッと私を見て、軽く会釈をした…

微笑みながら…
私は、外見上は何事もなく微笑んで会釈を返した。


実際には、その微笑みに、戒厘ちゃんとは全く違う嫌悪感を抱いて、
鳥肌を立てていた。


なんだかんだ言って、私戒厘ちゃんの黒い笑顔嫌いじゃないんだ………


新たな意外すぎる発見をしながら、会話をしないよう、
すぐに女性から視線をはずした。



すると、その人が動く気配がした。
注意をそちらに向けたとき、正面から戒厘ちゃんが現れた。


「お待たせしました…」
「ホントだよ…」
「……え?」


微笑みながら現れた戒厘ちゃんに、思わず本音を漏らすと、
戒厘ちゃんは不思議そうに私を見た。


ヤバッ…
誤魔化さなきゃ………


「パートナーほっといて、どっか行っちゃうんだもんな…」
「……寂しかったんですか?」
「残念…綺麗な花を見てたから、寂しくはなかったけどね……」
「それは、目の保養をじゃまして悪かったですね…」

私達は思わず笑顔で、端から見るとちゃんとカップルに見えるように
振る舞っていた。


それにしても、まだ隣に立つあの女性が気になる…



「………あ……あの………」


戒厘ちゃんと話しながら、隣に意識を向けていると、
戒厘ちゃんの後ろから声が聞こえた。
どこかで聞いたことがある声だけど………

一瞬、少し驚いて、戒厘ちゃんと目を合わせたけど、戒厘ちゃんが後ろを振り向くと、そこには恥ずかしそうにうつむく、さっき助けた女の子が立っていた。

「あれ?さっきの……」
「どうしたんですか?」

戒厘ちゃんが近くに寄って問いかけると、
その子は恥ずかしいのか真っ赤な顔で私を見上げた。


「……あの……パートナーがいる方なのに、
すごい非常識なお願いだと分かっているんですが、一曲でいいんです……
一緒に踊ってもらえませんか!!」
『……え?』

私と戒厘ちゃんは、思わず驚いて顔を見合わせた。

かなりの覚悟で言ったんだなぁ……
頭を下げる彼女に、そんなことを思っていると、戒厘ちゃんが答えた。

「まだ、私も踊ってないのですが…そんなに必死に頭を下げられたら、
困りますね……」


私は少し驚いた…
だって、てっきり任務中だし、やんわりと断るかと思ってたのに……

「どうするんですか?」
「そうだなぁ…」


少し、考えるように声を出すと、
彼女はすごく悲しそうな目をして顔を上げた。



なんか、ヤだなこの顔………


その悲しそうな顔がいたたまれなかった私は、彼女の前に移動した。

「…さっき、待ちぼうけ喰わされた仕返しな…」
『え?』

戒厘ちゃんと彼女の声がハモって、少しおもしろかった。

「いってくるから、おとなしく待っててな…」
「え?えぇ…」

驚いたままの戒厘ちゃんに背を向け、小柄な女の子の正面に立った私は、
とりあえずエスコートした方がいいのかと、手を差し出した。

「俺、踊ったことないし、下手だよ?」
「あ…ありがとうございます!!」

うれしそうに頭を下げた彼女の手を取ると、私は広間の中央に歩み出た。


そういえば、あのイヤな雰囲気の人どうしたっけ?
思いがけない人の登場で、すっかり忘れていたけど、
何だったんだろうさっきの………


「あの……」
「ん?」


いざ、踊ろうと広間の中央にきた瞬間、
彼女は恥ずかしそうに下を向いてうつむいた。

「どうした?」
「実は…」
「うん。」
「あの…」
「足でも痛い?」
「いいえ!違うんです……」
「どうした?次の曲始まるんじゃないかな?そろそろ…」
「私…踊れないんです!!」
「………え?」


聞いちゃマズいと分かってながらも、思わず聞き返してしまった……


「じゃ、なんで……」
「本当は、少しお話したかったんです!」

またもやかわいそうなくらい真っ赤な顔の彼女を見た私は、
彼女の手を引いて、歩き出していた。

「…え?」
「早く言ってくれればよかったのに…俺も踊れないし助かったよ…」
「…ごめんなさい……」
「謝らなくていいって……とりあえずじゃまになるし、静かなとこにいこうか…」

私はそのまま外に出て、近くにあったベンチに彼女を座らせた。

「あの……」
「パートナーはいいの?」
「…え?」
「ほら、さっきあのオヤジに迫られてたとき、パートナーいるって…」
「あ…あれ、実は嘘なんです…」
「え?」
「知り合いの紹介で、一人で来てるんです私…」
「そーなんだ!じゃ、ゆっくり話してても迷惑かからないね…」
「はい!え?あ、いいえ!!ダメです!
一曲終わったら、パートナーさんのところにお返ししなきゃ!!」
「あ…忘れてた…」
「もう!ダメじゃないですか!あんな綺麗なパートナーさん忘れちゃ!」
「怒られるとヤバいし、今の内緒ね…」
「も〜!」

私たちはそう言って打ち解け合い始めた。


彼女は花梨と名乗った。
一瞬驚いた……
カリンという名は結構あるけど、まさか親しくなるとは……


ってか、同じカリンでも、違いすぎるでしょ……
彼女は仕草一つ一つが女の私でもかわいいと思うほど、
どこぞの誰かとは違っていた。


しばらく話していると、誰かが外に出てきた。


誰か、少し涼みにきたのかと、ふとそちらを見ると、
そこにはあの嫌悪感あふれるあの女が立っていた。

「…っ!」
「どうかしたんですか?」
「…え?あ、ごめん…何でもないよ……」

心配そうな花梨ちゃんに、少しひきつったであろう微笑みを浮かべたとき、
その女が近づいてきた。


そのとき、また誰かが現れた。









そこに立っていたのは、紛れもなく、私の本来のパートナーだった。








何だろ?




何か違和感がする……



今、この空間にいるのは、私を含め四人の女だけ……



でも、何かが違う………



何かがおかしい………




違和感を感じた瞬間、突然耳鳴りがした。

「………っ」
「大丈夫ですか?」


思わず耳鳴りに顔をしかめた私を心配して、花梨ちゃんが私の腕に触れ、
私の顔をのぞき込んだ。

「ごめん…大丈夫だよ……ちょっと耳鳴りがして……」

そう言って微笑むと、花梨ちゃんは、ホッとしたように微笑み返し、
チラッと本来の私のパートナーの戒厘ちゃんを見た。

「俺のパートナーも、案外一人を我慢できないみたいだね…」
「…戻って差し上げた方がいいんじゃないですか?」

ゆっくりと近づく戒厘ちゃんに、花梨ちゃんは少し寂しそうに私を見上げた。



何でだろう……?
何で、この子にこんな顔されるとこんなにも心苦しいの?
どうして私は、もっとそばにいてあげたいと思うの?



「……踊るんじゃなかったんですか?」
「俺もこの子も踊ったことなくてな…」
「…心配するじゃないですか…」
「……え?」

チラッとあの女を見てそう言ったこの人の台詞に、
この人はあの女に気がついていたのだという確信と、
なぜか何かに違和感が深まった。



あの女の存在に対する違和感………


冷静に考えると、今まで感じたことのない、戒厘ちゃんに対する嫌悪感……


表情一つ一つに心が動かされる、花梨ちゃんの存在に対する違和感………



そして、性別を偽ってる私の違和感………









たぶん、ここにいるすべての人間が、嘘をついてる…

















そこまで気づいていたはずなのに、私は見た目に惑わされ、
違和感を無意識に無視し続けた。



「心配するんだ…珍しい……」
『…え?』


思わず出てしまった本音に、Wカリンちゃんが驚いたように私を見ていた。


「あ、いや!ほら、いつも信じてくれてたし…!」


ヤバい……
私今テンパって、男になりきってない……



「お取り込み中いいかしら……?」


突然聞き慣れない声がして、驚いてそちらを見ると、
そこにはあの女があの、いけ好かない笑顔で立っていた。

「何か、ご用ですか?」

平然と戒厘ちゃんが女に答えたとき、私の後ろにいた花梨ちゃんが、
ギュッと私の服に捕まった。




おびえてる?

違う……
何かが違う……


顔を花梨ちゃんに向けたとき、花梨ちゃんが突然私の腕を引っ張った。

「…え?」



よろめいて、一歩下がった次の瞬間、立っていたところに、
細い糸の様な物が刺さった。



なに………?
なにが起きたの??



『・・・え?』

私と花梨ちゃんは驚いて同時に声を上げた。

花梨ちゃんを見ると、花梨ちゃんもまた驚いて私を見ていた。



私は、花梨ちゃんに引っ張られたことで攻撃をかわせたことに対する
驚きだけど・・・
じゃあ花梨ちゃんは何に驚いた・・・?


「大丈夫ですか?!」

しりもちを付いて、花梨ちゃんを見ている私に、
もう一人の戒厘ちゃんが近づいてきた。




何?


頭の中で何かの警報が鳴り始めた。



「皆さん?そんなところで、ご歓談しててよろしいのかしら?」

『え?』


声をしたほうを見ると、あの女がいつの間にかコスチュームを変え、
不気味な笑顔で私達三人を見ていた。



「いつの間に変えたんですか服を・・・」
「あら、気づかなかったのかしら・・・?」
「ええ・・・まったく・・・」

戒厘ちゃんが立ち上がり、ドレスの肩の部分手ををかけた。






おかしい・・・



何かが変・・・






戒厘ちゃんが、中に仕込んでいるのであろう戦闘服に変わろうとしたとき、
また花梨ちゃんが私の腕をギュッと握った。
花梨ちゃんの目を見ると、微かに頭の中の警報が止んだ。



「・・・大丈夫ですか?」
「・・・うん。」




花梨ちゃんの言葉に、私はただ短く頷いた。


「・・・ホント全然気が付かなかったわ・・・」

私はそう言って、花梨ちゃんを見つめたまま花梨ちゃんに手を貸して、
立ち上がった。


「一つ教えてくれない?」
「何ですか?」
「・・・アンタ達誰?」
『え?』

戒厘ちゃんと女に距離をとって、花梨ちゃんとともに二人を見ると、
二人は少し驚いて・・・
でも、どこかそれを当たり前のような顔をして私を見た。

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