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気まぐれ日記(笑)
普通の日記・音声・バトン、なんでもアリの日記です♪
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6.夢



ある日、ある宿に泊まった私たちは、メルメルと亜梨ちゃん、
私と戒厘ちゃんのペア二部屋で泊まることになった。

部屋に入り、それぞれにくつろいで、
しばらくして戒厘ちゃんは眠ったのだけれど、
私は何故か寝付けなくて暗い部屋でぼんやりと月を眺めていた。


綺麗な月が輝いている。
月を眺めていると、自分が自分でないような錯覚に陥るときがある。

私って一体何?


私は、青龍の神子で、地界人で・・・

でも、どこから来たんだろう?

地界?


違う・・・

もっと前・・・


私が知る世界のもっと前・・・


私は何故ここにいるんだろう?

どうして、地界人の私がこんな旅をしているの?


それは、もしかして私が私となる前の誰かと関係があるのかな?



「そういえば・・・」

思わず小声で呟いた私・・・
確か、戒厘ちゃんって過去を覚えているって言う・・・


過去っていっても、私達が覚えてる過去のレベルじゃない過去・・・


たぶん、私達がこうしてココにいることに繋がる過去・・・


彼女は絶対それを言おうとしない・・・

そして、何かを償うよう私達を守ろうとする・・・


亜梨ちゃんもメルメルもそれに気づいているみたいだけど、
あえて触れようとしない・・・


イロイロ考えすぎて、喉が渇いた私は、冷蔵庫から水を出そうと、
椅子から立ち上がった。


そのとき、戒厘ちゃんが突然うなされだした。

「・・・うっ・・・」
「・・・?」

私は思わずそっと戒厘ちゃんに近づいた。


とても悲しそうな顔・・・
というか、苦しそうな顔で戒厘ちゃんはうなされている。


「イヤ・・・だ・・・」
「・・・え?」
「イヤだ・・・どうして・・・あ・・・にー・・・様・・・」


戒厘ちゃんの寝言に、私はその場から動けなくなった。


あ・・・にー・・・?
あにー・・・・


その誰か分からない名前を私は知っているみたいだった。


私は知らないのに、私じゃない誰かが知っていると訴えている。


涙を流しそうなくらい懐かしい名前・・・


私は思わず戒厘ちゃんの汗を拭った。


「・・・・っ?!!」
「あ・・・ごめん・・・」


私が触れたことに驚いたのか、突然起き上がり私の手首をつかんだ。

「・・・あ・・・」
「・・・なんか、うなされてて、汗・・・」

私がそう言うと、戒厘ちゃんはただ自分のつかんだ私の手を見つめていた。


「・・・ごめんなさい・・・」
「あ、ううん!私こそゴメン・・・起しちゃって・・・」
「違うんです・・・」


戒厘ちゃんは、私の手をつかんだまま、まるですがるかのように額にあてた。

「ゴメンナサイ・・・」
「戒厘ちゃん・・・?」
「ゴメンナサイ・・・」

戒厘ちゃんは何故か謝り続けた。

「どうしたの?」
「・・・いえ・・・なんでもないです・・・」

やっと私の手を離した戒厘ちゃんに、水を持ってくると、
戒厘ちゃんはいつになく、落ち込んだような、
今にも泣きそうな顔をしていた。


「なんか夢でも見たの?」
「・・・・ええ・・・とても嫌な夢を・・・」
「どんな?」
「・・・・・・思い出したくないのに、
覚えていなきゃいけない夢です・・・」


その戒厘ちゃんの言葉に、きっと戒厘ちゃんは
過去のことを夢で見たのだと思った。


戒厘ちゃんがそこまで平常心を無くすということは、
きっと私達の過去は悲劇に幕を閉じたってことなんだろう・・・


すくなくとも、『あにー』と呼ばれたその人は・・・


「すみません・・・」
「大丈夫?」
「ええ・・・ゴメンナサイ・・・」
「ねぇ戒厘ちゃん?」
「・・・?」
「・・・さっきから謝ってばかりだよ?」
「え?」
「らしくないよ戒厘ちゃん?」
「・・・らしく・・・ない?」
「・・・ホント大丈夫?寝ぼけてるんじゃない??」
「あ・・・そうかもしれませんね・・・」
「戒厘ちゃんは戒厘ちゃん。私は杏。そうでしょ?」
「そう・・・ですね・・・そうですよね・・・僕は僕・・・
杏ちゃんは杏ちゃんです・・・」
「・・・寝れる?」
「・・・ええ。」

やっと笑顔を見せた戒厘ちゃんに、私は微笑むと、
戒厘ちゃんのベッドの隣にある私のベッドにもぐりこんだ。

「私が側にいなかったから寂しくて怖い夢見たとか?」
「・・・そうかもしれませんね・・・」
「・・・冗談だよ?」
「ええ。分かってますよ?」

私達は寝転んだまま笑った。


「・・・いつでも起していいからね?」
「有り難うございます。」
「ってか、今度うなされたら私が無理やり起すから・・・」
「お願いします・・・」

そう言うと、私達はやっと眠りについた。




次の日の朝、寝不足のまま朝早く私は宿の中庭で太陽を浴びていた。

太陽を浴び、思わずこみ上げたあくびを押し殺し、
伸びをすると真後ろに亜梨ちゃんがいた。


「あ…オハヨ亜梨ちゃん…」
「あぁ…寝不足か?」
「まぁね…戒厘ちゃんが寝かせてくれなくて…」
「そうか…」

そう言うと、亜梨ちゃんは近くにあったベンチに腰掛けた。


「冗談なんだけど…」
「どうだかな……」


私が亜梨ちゃんの隣に腰掛けると、亜梨ちゃんは太陽を仰いだ。


「やっぱ、皆の時もああなの?」
「…最近、だいぶ静かに寝てるようだがな…」
「昨日はずっと謝ってた…」
「………そうか…」

亜梨ちゃんは何かを知っているかのように目を閉じつぶやいた。


「今日は部屋を変えるか?」
「ん〜別にいいよ…」


再び背伸びをした私は、亜梨ちゃんを見た。


「…アリガト」
「別に…敵が来たとき、寝不足でしたなんて言い訳で
とばっちり喰うのはイヤだからな…」
「大丈夫…私は青龍だよ?簡単にやられてたまりますか…
やられるくらいなら…」


「自殺するなんて言わないでよ杏?」


亜梨ちゃんと一緒に驚いて後ろを振り返ると、
そこには笑顔のメルメルと、複雑な顔をした戒厘ちゃんがいた。


「……自殺?」
「そんなもん、する訳ないだろこいつが…」

そう言う亜梨ちゃんを見ると、私を見た。

「そんなことで、逃がすと思うか…?」
「え?」


私より、何故か戒厘ちゃんが驚いた。


「オレが地界から引きずり出してきたんだ…
誰かにやられるのも、逃げるのも許さない…」
「………私だけ?」
「自分から死のうとするのはお前だけだからな…」
「何それ…」


私はわけわからないながらも、何故かどこかで納得していた。



自分から死のうとするのは私だけ……



「皆殺しません…絶対に……私が……」


突然俯いたままの戒厘ちゃんがつぶやいた。

「厘…ちゃん?」
「絶対に今度は…絶対に……」

戒厘ちゃんの悲痛な叫びのような呟きに、
私とメルメルは思わず顔を見合わせた。

そのとき、いつの間にか私の隣から戒厘ちゃんの側に移動した亜梨ちゃんが
そっと戒厘ちゃんの肩に手を置いた。


「の…あ……さ」
「バカが…」


戒厘ちゃんが亜梨ちゃんを『のあ』と呼んだ瞬間、
亜梨ちゃんが戒厘ちゃんの頭を殴った。


「亜梨ちゃん?!」
「亜梨姉?!!」


「何するんですか亜梨ちゃん!!!」
「寝ぼけてんな…」
「え?」
「……杏……ちょっと来い……」

やっと元の戒厘ちゃんに戻ったと思ったら、亜梨ちゃんが、私を呼び寄せた。


「何?」

私が亜梨ちゃんに近づくと、突然亜梨ちゃんに襟首を捕まれた。


「ちょっ!亜梨ちゃん!!」
「何するんですか亜梨ちゃん!!」


見ると、戒厘ちゃんもまた同じように引きづられていた。

「梅流…ロープ二本準備しろ…」
「うん!!」
「ちょっと!何するの!!」
「何考えてるんですか二人とも!!」
「寝不足らしいからな…縛り付けてでも寝かせる。」
『ええ?!!!』


それから、あっと言う間にヘッドに連れ戻された私たちは、
本当にベッドに縛り付けられた。


「逃げないから、ほどいてよ!」
「ダメだ…」
「杏ちゃん…観念した方がいいみたいですね…」
「夢見悪そ〜」
「安心して杏…うなされたら、起こしてあげるから…」
「デコピンでな…」
「なんで、デコピンなんですか?!」


そんな感じで騒いでた私たちだったけど、寝不足だったのも手伝って、
いつの間にか、夢を見ていた。







懐かしい夢だった。


側には皆がいる…


だけど、どこか違う皆だった。
でも、一緒にいることが当たり前だった…
心地よかった…


目を覚ますと、隣のベッドの戒厘ちゃんは、
昨日とは違ってスヤスヤ眠っていた。


唯一動く首だけ動かすと、テーブルには梅流ちゃんが、
ソファには亜梨ちゃんがそれぞれ眠っていた。


そして、天井に視線を向けると、さっきまで見ていた夢が思い出せず、
少し考えても思い出すことはできなかった。


「まぁいっか…」

そうつぶやき、私は思考を変えた。

思い出したくない夢を思うより、これからを考えよう…


とりあえず、三人が起きたらなんと言おうか…

それから、亜梨ちゃんにはどうやって仕返しをしようか…


ワクワクしながら、私はこれからを考えた。


私は私…
前も後も関係ない…
ただ、精一杯今を生きて、今を大切にするだけ…

昔の誰かを追うよりも、今のこの人達と楽しもう…


たぶん、それが前の私が望んだことだろうしね…


そんなことを考えながら、私は三人の目覚めを待ち続けた。

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